スローエイジングについて

近年、高齢化が進み、アンチエイジングがよく言われるようになりました。ある部分に着目して、そこの加齢を積極的に止める。そんな解釈になってとても便利に伝えられていますね。

病院などで、「運動不足だね」とか「筋肉が弱ってしまってますね」など言われたことのある方も多いのでは無いでしょうか。テレビも健康番組が人気のようです。通信販売の番組も随分多く目にしますね。○○○ を摂ると「膝の痛みが消えた」とか「腰痛が良くなった」というような体験談からの商品紹介の流れ、今だけ限定の割引き中！の様な長いCMを多く目にします。

　ただ、往々にして現代を生きる私たちは、過剰摂取こそ問題なのであり、冷静に考えてみれば、健康に問題を起こすほど何かの栄養素が欠乏しているなどは考えづらい気もします

テレビを見ながらできる筋トレグッズなど素晴らしいですが、筋トレで筋肉量を増やせばそれらは維持されていかなければ意味がありません。当然タンパク質などを多く摂る必要がありますが、内臓器官もそれなりに力が衰えているわけですから、その辺りは加減して食べないと、今度は成人病系の問題発症を早める可能性が出てくる・・・　　そんな心配もあると思うのです・・・

 

何でもそうですが、大切なのはバランスを壊さないことです。運動は本当に健康に良いと無条件で言えるでしょうか？　健康に気を遣う食事もそうですが、やりすぎてしまえば 今度はそれが違う問題の理由になりかねないのです。「ほどほど」とか「中庸」とか、若い頃にはあまりアンテナに引っかからなかった言葉ですが、年齢を重ねるごとに気になるワードです。

スローエイジングとは、『ゆっくり枯れる』という考え方です。紅葉や、日本庭園の侘び寂びの世界観を、私たちの文化は古くから愛でてきました。今では海外にもその魅力は広まり、その精神性を学びに日本へやってくる外国人も少なくはありません。はかなげではありますが、私はそこに美を感じます。

日々老いる中で「可能性」とは何でしょうか？　私たちの身体は大変複雑に構成されています。そして、各所それぞれはそれぞれの判断で有機的な結びつきをし、環境に適応したり、練習と学習によって身体に作業を覚え込ませることも可能です。一度習得した一連の動きは、脳が衰えても忘れたりはせず、見事に動きます。脳の有機的なネットワークは、死ぬまで増殖させることが可能で、手からの刺激、好ましい感情からの刺激が大きく作用するようです。老化とは、自然界でも人間の体内でも同じで（そもそも人間の体内も自然物ですが）「流れ」の質の高さが維持されていれば、若々しさを保つことが可能です。「流れ」とは、体内循環しているあらゆる流れるものの事です。酸素や二酸化炭素、窒素、血液や老廃物、免疫、神経は微弱な電気の流れです。体内に取り入れられた栄養素も、様々に変化しながら体内を流れます。本来の整体は、筋肉を揉んだり骨格の調整をしてスッキリさせるのが目的ではなく、流れの滞りを見つけて改善し、自己修復力のバランスを取り戻す作業をチマチマとやるものです。そこには膨大な手間と愛情を要します。自然を相手にするご商売ならおそらく全て同じだろうと思います。私は子育ても、自然を相手にする商売では無いかと思っています。膨大な手間と愛情を必要としますから。私自身５０代の半ばになりまして、老境に至る手前となりましたが、実は「自分の手入れ」をするということは、自分を知るという事にもつながっており、また、

どうしたら自分が幸せに一生を全うするのだろうか？と思う時、自分を知らずに？は無いわけです。

植物でもいいしペットでもいいですが、よく観察してあげないと何をすれば良いのか分かりません。

自分の身体の状態を、よく観察されている方は、少ないのでは無いでしょうか？

なぜ親身になって出来るのかご説明いたします。私が大好きな事の一つに人間観察があります。私は映画が大好きです。人間ドラマが好きなので、単館上映の映画を見るために都心や地方へも出かけて行きます。ドキュメンタリー作品も多く、大体がお客さん受けしないようなものばかり（ 笑 ）　　

良作には人生の真理の一面が克明に刻まれており、心に響く何かを感じる事ができるから好きなのでしょう。この仕事を通じてたくさんの方の人生の一部分に触れさせていただく機会がままあって、その影響も受けているからだろうと思います。患者様とは「先生」と呼んでいただく立場でのやりとりではありますが、段々に相互信頼が育まれて、少しずつ相手の「人となり」が見えてくると、尊重と敬愛の気持ちから相手の方に自然と接するようになります。もちろん、全ての方とそうなれたわけではありませんが、そういった経験はとても清々しく気持ちが良いものでした。仕事を通じていささかでも人として成長できたかなぁ？　などと勝手に思っております。

おかげさまで今では 私にとってこの仕事との関係が、そういうものになりました。親身になって行わなければ、何も得るものがありません。お互いにそうなれたら、さらに良くなるでしょう。限られた人生の時間の中で、なるべく多くの方のお役に立てれば、私としては嬉しい限りです。その様な思いがあればこそ、親身に立ち会わなければ意味がない　と考えているのです。